知ればもっと好きになる、スリップウェアの独自性。

最終更新日:

知ればもっと好きになる、スリップウェアの独自性。 - 表紙

今回のテーマは「スリップウェア」です。

いよいよ4/9(土)に控えた『今津加菜 オンライン個展』。
その今津さんが作られているのが、スリップウェアといううつわ。今回は、個展をより楽しんでいただけるよう、「スリップウェアってそもそも何?」というところからお話ししていきます。

スリップウェアってどんなうつわ?

スリップウェアは独特の雰囲気を放つうつわです。
「そんなうつわ聞いたことがない」という方も、もしかするとどこかで見たことはあるかもしれません。

その見た目の特徴を簡潔に言うなら、「線の境界が曖昧で、うつわに溶け込んでいるかのように見える」ことかと思います。

今津加奈 スリップウェア

わたしは初めてスリップウェアを見たとき、その独特で強烈な雰囲気のためか、実はあまり惹かれることはありませんでした。

でも、なぜか時間が経てば経つほど、その印象が鮮明に蘇ってくる。もう一度見てみたいと思う自分がいる。気がつけば、スリップウェアの魅力の虜になっている。
そんなうつわです。

スリップウェアは英国から伝わった

スリップウェアは近年人気が高まっているうつわの一つでもあり、多くの作家によって制作されています。

でも実は、その由来は英国にあるんです。
18世紀から19世紀にかけ、英国でオーブン皿として使われていたうつわが今の日本のスリップウェアの元となっています。

19世紀末、英国のスリップウェアは工業化の波によって人気が衰え、その姿を消しかけていました。そんな折、柳宗悦をはじめとする民芸運動の創始者たちがその美しさを見出したことによって、その技術が日本にも伝来することとなったのです。

以来、世代を超えてその技術が磨かれていきます。加えて、そこに日本独自の意匠が取り入れられていったことによって、今の日本のいわゆる「スリップウェア」というものに繋がっているのです。

スリップウェアの独自性は制作工程から生まれる

最初に言った、「線の境界が曖昧で、うつわに溶け込んでいるかのように見える」という言葉。
どうして、スリップウェアだけがそのような独自の雰囲気を放つのか。

その秘密は制作工程にあります。
日本でスリップウェアと現在呼ばれているものは、主に化粧土の重ね掛けによる技法のことをいいます。

つまり、化粧土の上から重ねて化粧土で加飾するという独自の工程が存在するのです。
化粧土は「土」と書くものの、液体です。液体の上から液体を重ねることによって、互いが溶け合い、境界が曖昧になっていくのです。

今津加菜 スリップウェア 制作風景

代表的な文様を紹介

最後に、スリップウェアの代表的な文様を紹介します。

鎬文様」という装飾。
うつわの表面をスリップが行き来するように覆っていきます。一見、とてもシンプルに見えますが、スリップの線の魅力が最もよく表れると言われています。

民藝運動の創始者の1人、濵田庄司氏もかつて「スリップウェアは鎬に始まり鎬に終わる」と語ったとか、、。

スリップウェア 鎬文様

おわりに

今回はざっくりとですが、スリップウェアについてご紹介しました。
他とは雰囲気が違ううつわであるだけに、その歴史や背景を知るとより楽しんでいただけるかと思います。

来たる4月9日、今津加菜さんの個展もどうぞお楽しみくださいませ。
忘れそうな方はLINE公式アカウントにて開始時にお知らせいたします。
よろしければ友だち追加くださいませ。(https://lin.ee/FPbmdDF