大切なうつわを長く使うために。和食器のお手入れ方法を知ろう

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和食器を手に持つ様子

せっかく購入したお気に入りのうつわは長く使っていきたいですよね。普段すこし気を遣ってあげるだけで、購入時のきれいな状態が長く保てるうえ、経年変化の様子も味わい深いものとなります。

今回は、和食器を使ううえで最低限気をつけたいポイントをまとめてご紹介します。もちろん全てを完璧にできなくてもOKです。自分らしいスタイルを大切にしながら、できる範囲でお手入れを楽しんでみてください。

そもそも和食器とは?

茶碗を手に持つ様子

和食器とは日本料理に用いる容器の総称のことで、主に茶碗・皿・椀・鉢・丼・箸などを指します。洋食器と異なるのは、手触りや風合いに重きが置かれている点。これには箸を使ってうつわを手で持ち上げるという、日本ならではの食文化が関係しています。

またうつわの形や深さにもさまざまな種類があったり、多彩な色使いが見れたりするのも和食器ならでは。料理を中心に考えて作られている洋食器に対して、和食器はうつわから感じられる風情や趣も大切にして作られています

陶器と磁器。同じ焼きものだけど何が違う?

和食器のなかでも家庭でもっともよく使われるのが陶磁器。同じ焼きものではありますが、素材や質感など異なる部分は多いです。きちんとお手入れをするためにも、まずはそれぞれの特徴を確認しておきましょう。

陶器

キマノ陶器のうつわ

自然に採れる土(主に粘土)が原料で、「土もの」と呼ばれます。土のぬくもりが感じられ、素朴で温かみのある質感が特徴です。厚手に作られることが多いですが、磁器に比べると割れやすいため、取り扱いには注意が必要です。

また吸水しやすい性質のため、ニオイやカビにも気をつけなくてはいけません。私たちにとって身近な存在でありつつも、実はちょっぴり手がかかるうつわなんです。

磁器

赤堀友美さんの磁器のプレート

陶石と呼ばれる岩石が原料で、「石もの」と呼ばれます。透明感のある美しい見た目と、つるっとした質感が特徴です。陶石を細かく砕いて高温で焼き上げるため、薄くて丈夫な仕上がりになります。

陶器とは反対に吸水性が低いため、汚れやニオイが染み込みにくいです。使い勝手だけを見れば、陶器よりも扱いやすいといえます。ただし熱を伝えやすいため、熱いものを入れるときは注意がいります。

陶器 磁器
原料
手触り ざらり つるっ
強度 弱い 強い
吸水性 高い ほとんどない
目止め 必要なものが多い 不要なものが多い
レンジ ×(一部○)
オーブン × ×
直火 × ×
食洗機 ×

※上記はあくまで一般的な違いです。作家によって異なる部分もございます。

大切なうつわのために。これだけはやってほしいお手入れ手帖

大切なうつわを長く使うために、これだけは気をつけたいという点をまとめました。すこし面倒だなと思うところもあるかもしれませんが、手間をかけた分だけ愛着が増すこともあります。できる範囲でチャレンジしてみてくださいね。

はじめて使う前に 〜目止め〜

土が荒く吸水性の高い陶器・土鍋などは、はじめて使う前に「目止め」をしておくことで、汚れやニオイが染みにくくなります。目止めとは、米や片栗粉などでんぷん質のあるもので貫入や土の粗い目をふさぐための作業です。

土が細かく焼き締まっている磁器には必要ないことがほとんど。また陶器のなかでも、作家によって撥水加工がすでに行われているものもあります。

<目止めの方法>

  1. 米のとぎ汁、もしくは小麦粉か片栗粉を溶いた水にうつわを浸します。
  2. 弱火〜中火で沸騰させます。(必ず常温の水にうつわを入れてから加熱してください。沸騰した鍋にうつわを入れたり強火で急激に加熱すると破損の原因となります。)
  3. しばらく煮沸したら火を止めます。鍋ごと完全に冷めるまで待ってからうつわを取り出し、洗ってからよく乾かします。(私は沸騰してから12~15分程度で火を止めています)

料理を盛りつける前に

料理を盛りつける前には5分ほど水に浸してから使うようにしてください。前述の通り、陶器は吸水性が高いという性質を持っています。使用前に吸水させておくことで、料理の色やニオイが染みにくくなり経年変化をゆっくりさせられます。

「5分も浸しおくなんてすこし面倒...」という人は、さっと水にくぐらせるだけでもOKです。これだけでも随分と変わります。また、うつわが変化する様子を楽しみたい場合は、あえて何もしないという選択もありです。うつわのどんなところが好きかによって変わる部分かもしれませんね。

<電子レンジについての考え方>

この現代では、電子レンジで使用できるかどうかは重要なポイントですよね。磁器・半磁器・耐熱陶器についてはレンジ使用OKです。ただ通常の陶器については意見が分かれます。何度もレンジで使っているとと、知らないうちに痛める原因になっていることも。

とは言いつつ、私は陶器でも気にせずレンジ使用することが多いです。あまり神経質になりすぎても、せっかくお気に入りのうつわを使う機会が減ってしまう気がして..。私のように、もし壊れたらまた買い直そうと割り切ってしまうのもひとつのスタイルだと思います。

でも金属系の釉薬(例えば銀彩など)がかかっているものについては絶対NGです。火花が出る危険がありますので使用しないでくださいね。

使ったあとの洗い方と片づけ方

なるべく柔らかいスポンジを選び、食器用洗剤をつけて洗ってください。よくすすいだうえで、しっかりと乾燥させることが大切です。水分を含んだまま食器棚に収納すると、シミやカビの原因になります。

うつわを重ねて収納するときは、似たかたちのものは極力まとめるようにしてください。平皿には平皿だけを、底の深い鉢には同じような鉢をまとめられるとGOODです。違うかたちのものを重ねると、負荷が偏ってかかってしまい欠けや割れの原因にも繋がるので注意してください。

<避けておきたいこと>

  • 長時間のつけ置き洗い
  • かたいスポンジやクレンザーの使用

お手入れの困ったを助けるQ&A

Q. 料理のニオイがなかなか取れないのですが...

A. 水を張った鍋にうつわを入れて煮沸するとニオイが取れることもあります。

Q. シミができてしまいました。どうすれば取れますか?

A. 水が染み込んでいるだけの可能性もあるので、まずは天日干しなどでよく乾燥させてみてください。それでも取れない場合は、煮沸を試してみましょう。茶渋やコーヒーの染みには、スポンジに大さじ1杯ほどの塩を含ませて磨くのも効果的です。

Q. 大切なうつわが欠けてしまいました...

A. 小さな欠けであれば、布ヤスリでこすると滑らかになります。ヒビ・割れの場合は、金や銀などの金属粉で装飾して補修する「金継ぎ」という方法があります。金継ぎの専門店もありますが、自分で補修できる金継ぎセットも市販(書店など)されているので挑戦してみるのもいいですね。