葛西国太郎(HANI) - つくり手の話
嵐山や太秦映画村といった、京都観光で人気のガヤガヤしたエリアからすこし離れたところにある花園という街。昔からの商店もちらほらと見られ、下町という表現が似合う落ち着いた場所です。そんな街の路地をすこし入ったところに葛西国太郎さんの工房「HANI」はあります。
葛西さんは、京都のなかでもこの街が一番好きなんだそう。
『交通の便がいいのと、雰囲気のいいスタバがあるんですよ。』
勝手に古典的な作家像を作り上げていた私は「作家さんもスタバとか行くんですね」と、すこし意外に感じながらも心地よい親近感を覚えました。
葛西さんの工房にお邪魔してまず驚かされたのは、工房のぴっしりと整頓された様子。制作途中の作品がきれいに整列しているのはもちろん、細かい道具まで気持ちいいくらいに整理されていました。壁掛け棚なんかも駆使されていて、思わずおしゃれなキッチンを思い浮かべしまうほどです。
ご存じの方も多い通り、葛西さんの代表作ともいえるのがDAISYシリーズ。最近はどこに出しても販売と同時に完売してしまうことが多いんだとか。
『鉄分が多く、焼きあげると赤く発色する赤土と呼ばれるものを使っています。そこに白く乳濁した釉薬をかけることで、こうした落ち着いた雰囲気になるんです。』
わたしを含め、DAISYファンを虜にするかわいい花びらは一つひとつ手作業。どろどろとした白い土をスポイトに入れて、花弁をイメージしながら少しずつ垂らしていきます。とても繊細な作業ですが、くるくるとうつわを回転させながらあっという間に1枚が完成。焼き上げる前も愛らしい姿をしていました。
DAISYシリーズが生まれたのはかなり前のことで、どんなきっかけで誕生したのかはもう覚えていないとのこと。でも古いテキスタイルが好きでよく見ていたため、恐らくそこからインスピレーションを得られたそうです。
葛西さんが制作時にイメージしているのは、”幸せな食卓”という理想像。
『小さい頃家にあった古い料理の本に出ているような、垢抜けないけれど夢がある、どこかかわいくて懐かしい感じのする、そういう幸せな食卓のイメージを思い浮かべています。』
だからSNSで使ってもらっている様子を見られると嬉しくなるんだそう。 みなさん、たくさんアップしましょう。
今後は工房の引っ越しをしてますます職住を一体化していきたいという葛西さん。 作ることを本当に楽しまれているんだなと、話されている様子からよく伝わってきました。
その人気ゆえご希望される方みなさんにお届けできないことが心苦しくはあるのですが、どうか入荷を楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
<葛西国太郎 プロフィール>
1977年 北海道生まれ。金沢美術工芸大学デザイン科卒業後、京都府立陶工高等技術専門校を経て、2009年より石川県の九谷青窯にて作陶。2016年より京都にて独立し、工房「HANI(ハニ)」を立ち上げ。小さな花弁が彩られたDAISYシリーズを代表作とし、国内だけでなく国外でも人気の作家です。